282人が本棚に入れています
本棚に追加
気づいたら、眠っていたようだ。少年はそう思い周りを見回す。全体的に白い、たぶんここは病院だろう。
更に周りをよく確認すると、自分は今手術台の上にいるのだと気づく。それに周りが慌ただしい。何かあったのだろうか。
少年は起き上がろうとするが、起き上がることができない。何故か体を黒いベルトのような物で締め付けられている。
幸い自分の体に痛みのようなものは走っていないし、怪我をしているようには思えない。しかし、何かがあったのなら立ち上がって周りの様子を確かめないといけない。
「おーい、何があったんだ? それに、誰かこのベルトを外してくれ!」
少年はそう思い、叫び声を上げるが、周りの慌ただしい気配は止まず、やがて何かが壊れるような外から聞こえてきた。それに加えて獣の唸り声のようなものも。
誰も助けにはきてくれないと少年は悟ると、必死に拘束から逃れようとするがかなりきつく体は縛られていて自分の力だけではとても抜け出せそうになかった。
「おい、何があったんだ!? 誰か」
少年が再度外に呼びかけていると、その途中で荒々しく部屋のドアが開けられた。慌てている様子の白衣を着た男は体から血を流している。何かが起こっているのは確実なようだ。少年は白衣の男に声をかけようと口を開きかけたが、男に続いて入ってきた化け物を見て驚愕から、言葉を発することができなかった。
全身を緑色の鱗で全身を覆う大柄なその化け物を見て男は叫び声を上げ、少年の目の前で化け物のそのみるからに強靱そうな顎で頭に食らいつかれ、頭部から血を噴出すると、そのまま力なく床に倒れこんだ。
なんだ、これは。なんだこの生き物は。何が起きているんだ。
少年が呆然と目を見開きながらそう考えていると、目の前の化け物は満足そうに眼を細めると、数度咀嚼した後、今度は少年に視線を向け口の端をまるで人間が笑みを浮かべるかのように吊り上げた。
そして、そのままゆっくりとした足取りで少年に近づいていく。少年は必至に拘束から逃れようとするが、ベルトは当然外れない、このままでは先ほどの男のように目の前の化け物に食われて死んでしまう。
「くるな、くるな!!」
少年は半狂乱になりながら化け物に向かってそう叫ぶが、化け物がそんな言葉を聞いて歩みを止める筈がない。
普通ならば。
最初のコメントを投稿しよう!