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「その前に一つ質問していいかい? 君があそこに運びこまれたのは今日だったりするのかな」
「わかりません、気が付いたらあの施設の手術台の上にいました。それ以前に運びこまれた記憶がないので、あの施設にいつ来たのかはわからないです」
ワタルの返答に女性は納得したような表情を見せた。
「ということは、貴女はもっと前からあの施設に? あっ、紹介が遅れました。俺は千堂航と言います」
「私の名前は近藤水樹(コンドウミズキ)、よろしく。あぁ、私は君より結構前からこの施設に捕まっていた筈だ。という事は君は無意識に能力を発現したのか、普通に才能があるな」
ミズキにそう言われたワタルは、能力と言われ、後ろに佇む緑色の化け物に視線を向ける。能力なんて普通に言われてもとても信じることができないが、こうも現実離れしたことが多いと、その話も容易に納得できてしまう。
「能力ってこの化け物に命令できる力の事ですか? なら、もしかして貴女も」
ワタルはそう言いながらミズキの周りに化け物が隠れていないか探すが、どこにもいない。
「いや、化け物を操る力なんて君だけしか持ってないかもしれない。私のはこういう力だ」
ミズキはそう言うとその場で突然浮き上がった。高さこそ数十センチしか地面から離れていないが、確かにミズキの体は地面から離れている。
「風を操っているように見える能力だ。便宜上風を操る能力と呼んでいる。ここでは何故か上手く力を使えないが、研究所にいた時はもっと強い力も操れた」
「風を操っているように見える能力? 風を操っている訳ではないんですか?」
ワタルがミズキの能力の説明に疑問を感じる。風を操る超能力と言われればそのまま納得してしまいそうな状況だからだ。
「私自身にも良くわからないんだが、実際には風を操っている訳ではないらしい。あの研究所の研究員が言っていただけだから信用ならんがな」
その後二人は詳しく情報を交換し合ったが、ミズキもこの状況が何故発生したのかまではわかっていないようだった。ミズキも気づいたら研究所の中で目覚め、今日まで能力の訓練や測定のようなものをやらされていたらしい。
「何はともあれここから脱出しよう。いつ奴らが追って来るかわからないし、日が暮れたらやばそうだ」
ミズキはそう言うと立ち上がり、ワタルもゆっくりと立ち上がった。
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