第1章

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「なんであいつ生きてんだろうな」 やめてくれ。聴きたくない。 「迷惑掛けるばっかりの"化物"なのに」 「あの子生きてる価値あるのかしら?」 「あんな子なんて産まなければよかった」 ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめん。 俺が全部悪かったんだ。 少年は家族が自分の悪口を言っているのを聴いてしまった。 文句を言いつつも自分を気にかけてくれていた家族の姿が、記憶の中の家族が。親が。姉が。音を立てて壊れて砕けていく。 少年は生まれつき体が丈夫だった。 幼い時、犬に襲われた時にその犬を返り討ちにした事から自分の力が人より異常に強いと気づいた。気づいてしまった。 そしてそれと同じ時期から周りから異物を見るような目で見られ始めた。 自分の家族も、その人達と同じ目をしてるのだろうか。 知りたくない。見たくない。 心が折れそうだった。 部屋に駆け込んだ少年、三葉 響也(みつば きょうや)は膝を抱えて丸くなる。 そんな彼の側に静かに寄り添う小さな影。 彼が大事に育てている黒猫のミライだ。 ミライは響也の足に乗り、大丈夫?とでも問いかけるかのように小さく鳴いた。 「心配してくれるのか?」 今にも泣き出しそうな、とても小さな声で問いかける。 その言葉にミライはニャッと、短く鳴いてコクっと頷いた。 「……ありがと」 自分を励ましてくれた小さな同居人の頭を優しく撫でると、響也は顔を上げて、立ち上がった。 ミライを頭に乗せ、クローゼットの中から少し大きめのバックを取り出し、愛用のノートパソコン、筆記用具、下着と上着、ズボンを何着か。 お気に入りの小説数冊に、オーディオプレイヤーをバックに入れ、イヤホンとスマートフォン、財布をポケットに突っ込む。 そのあと、1着のフード付きのジャンバーを取り出して羽織り、メモ書きを残して静かに家を出た。
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