第1章

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冬の肌を刺すような冷たい風に身を震わせ、歩く。 家を出たはいいが、これからどうしようか。 バイトはしてるし、幸い金はある程度はある。 通信制の高校に通っているので時間はたんまりあるのが有難かった。 「まずは、住むとこ見つけないとな」 安いボロアパートでもいいから、住む場所を借りよう。 そう考え、駅前の不動産屋へと、足を向けた。 「安いアパートですと……ここですね」 不動産屋さんで、なるべく安いアパートを教えてもらうことにした。 運がいいことに、示されたアパートは少しボロいがちゃんと、風呂とトイレがあり、ネット環境もある。 家賃は2万円で、バイト先からかなり近い。 「ここで、お願いできますか?」 「はい、大丈夫ですよ。こちらが、そのアパートまでの地図になります。」 響也は、その言葉とともに現在いる不動産屋からアパートまでの地図と、鍵を渡された。 「ありがとうございます」 そう言い、頭を下げると、響也はその場から立ち去った。 「ここ……か」 今、響也は教えてもらったアパートの前にいた。 だが、そのアパートは最近修理でも行ったのか、壁や階段が真新しく、外観は綺麗であった。 「にゃっ!にゃっ!」 頭の上で、ミライは嬉しそうに鳴いている。 なんでも、あの人がこのアパートの管理人だったらしく、小難しいこと抜きで入れたので有難い。 「えーと……205か」 鍵についてるタグの番号を見ながら階段を上がり、部屋にはいる。 部屋は六畳ほどで、玄関のすぐ側にトイレが、その反対側には風呂がある。 取り敢えず部屋の隅に荷物を置き、電源に充電器をさして、スマフォを充電する。 しかし、今は何の道具もない。 幸い、今は手持ちにコンビニで買ったオニギリとお茶があるので今晩は凌げるだろう。 そう考え、必要な家具や道具を、簡単にリストアップしてから、ミライに餌をやる。 ミライは、響也の手からキャットフードを、素早い動作で全て回収し、あっという間に平らげた。 「相変わらずだなぁ…」 満足したのかゴロンと仰向けに寝そべるミライのお腹を撫でる。 「にゃぁ」 気持ち良さそうな声を出し、ミライはされるがままになっている。 そんな光景を見ながら、響也は微笑んだ。 明日からやることは山積みだ。 頑張ろうと心に刻み、かろうじて持ってくることのできた薄めの毛布を羽織り、自らの着替えを枕にして眠りについた。
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