病んでる彼女

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ザシュッ そんな音を立てて扉を開けて入ろうとした俺の目の前の壁に、確かグルカナイフと言う――凶悪さの極致のナイフが叩き込まれた。 ここは特殊部隊とテロリストとの互いの正義をぶつけ合う戦場などでは勿論無く、日本の、しかも高校の朝の教室での出来事だ。 しかもそれを振り回しているのは、恰好つけたヤンキーなどでは無く、身長が恐らくは俺より15センチは下の、黒い髪と少し上を向いた鼻が可愛い女の子である。 「うおおあぉぉ!」 雄叫びの様な悲鳴を上げつつ、ぶざまに後ろに倒れる。 「だめだよ、逃げちゃ」 彼女は、静かに言いながら、可愛い、相当ぞっとする笑顔を浮かべつつ、壁からボコンと音を立ててグルカナイフを引き抜いた。 目の前にパラパラと白い壁の破片と、半分に切れた画鋲がカランと落ちる。 慌てて立ち上がり退避、背中を向けて走り出す。
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