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「命を無駄にするな」、なんて言われても、俺は何も感じない。感じることはできない。
だって俺の命は俺だけの物だ。他の誰の物でもない、自分だけの生だ。
無駄にしようと何だろうと、それは他人が決めることじゃなく、俺自身が決めることではないか。
27年間生きてきて思うに、俺の命は誰かを“守る”為の物じゃなく、誰かに“役立ててもらう”為の物なんだろう。
子供の頃から疎まれてきた俺だ。誰かを“守る”ことなんて出来ない。結局失敗してしまうのは目に見えてる。
……そりゃあ、守りたいって思った人くらいいる。この子を俺の人生の全てを賭けてでも守り抜きたい、って、本気でそう思った人は確かにいる。
でも彼女は俺の為の人ではなく、既に違う誰かの為の人だ。
──そうさ。いずれ俺は死ぬ。
明日か明後日か、それとも1年後か10年後かは分からない。
だがこんな生き方をしてて長生きできるとは俺自身期待してない。
言うなれば、俺は一本の剣なのだ。
そして使い込まれた剣はやがて折れる。
それまでに──俺という剣が使い物にならなくなるまでに──俺は果たしていったい何人を助けられるのだろう。どれくらいの人の役に立てるのだろう。
願わくば、死ぬ時に誰かから「ありがとう」と言われて逝きたいものだ。
「さてと。たしか次の仕事は──」
夜の草原の中。
月明かりが俺を……剣にのみ生きた男を照らしていた。
終
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