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目線を下げてみると、純白のドレスを纏った彼女は目線だけリカルドに向けて、ただ前だけを見据えていた。 「ヴァンは遅刻はしても、絶対に約束は破らないもの」 「でもよ、アイギナ──」 「それに」 彼女はリカルドを遮ると、目線を上げてリカルドと視線を交わしながら言葉を続ける。 「リカルドにも約束したでしょ?……もう二度と約束は破らない、って」 静かに、柔らかに、紡ぐアイギナ。 その言葉には“彼”に対する絶対の信頼が籠っているのだということをリカルドは瞬時に察する。 「……あぁ、そうだったな」 事実自分達と交わした約束を彼が破ったり忘れたりしたことは一度も無かったと、今までのことを回顧して思い出す。 「しかしそれと遅刻は別問題だろう」と言いさした瞬間、アイギナが「あ」と小さく声を上げた。 何かと訝り彼女の視線を追い掛ける。 ──するとリカルドの目にも、肩で風を切って向かってくる“それ”が見えた。 せっかく整えてやった髪を振り乱しながら走ってくる友人──本日の主役──ヴァン・クロイツを発見して、思わずリカルドは頭を抱えた。
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