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「アイツ……!俺がせっかくセットしたのに台無しじゃねえかっ!」 「でも、ヴァンらしいね」 そう言われてリカルドは気付く。アイギナが目を細めて微笑んでいるのを。 ──アイギナは一時期感情を無くしていた。笑うことも、泣くことも忘れてしまった時があった。 その彼女が微笑んでいるのを見て、リカルドはため息をついて「ま、それもそうか」と苦笑しながら首肯する。 本当なら文句の一つでも言ってやりたいところだが、今日の良き日にそんなことを言うのは無粋というものだろう。 「んじゃま、やっと揃ったことだし始めるとしますかぁ」 そう威勢良く言って、リカルドは二人より先に歩いていった。 その場には遅れてきたヴァンとアイギナだけが残る。 「っ……スマン。遅くなった」 息を整える余裕もなく、ぜえぜえ声を枯らしながらヴァンが言う。 「どうしたの?」 遅刻の理由をアイギナが問うと、言いにくそうに頭を掻きながら視線を左右に泳がせるヴァン。 「その、色々と立て込んでてな……本当なら間に合ったんだが途中で引き返す羽目になって……気付いたらこんな時間になっていた。本当にスマン」 頭を下げるヴァンを見て、アイギナはクスリと笑声を漏らす。 「良いよ。怒ってないから」 「……本当か?」 「嘘だと思う?」 問い返されて何も言えなくなるヴァン。 事実アイギナは笑っていた。そこに怒気は微塵も感じられない。 ホッと安堵の息を吐くと、ヴァンは気を取り直して左腕をアイギナに差し出した。 「遅れてきて何だが……行こうか、アイギナ」 「うん。行こう」 短く言葉を交わして、二人は先ほどリカルドが入っていった目の前の建物……古ぼけた教会に腕を組んで踏み込んだ。
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