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「……アイギナ」 「うん?」 「俺はまだ咎人の身だ。迷惑をかけるだろうと思う。哀しませることもあるだろうし、淋しい思いをさせることもあるだろう。場合によっては、俺はお前のもとに帰れなくなる時だってあるかもしれない。……それでも、俺で良いのか?」 「……うん。ヴァンが良い。ヴァンじゃなきゃ嫌。ヴァンは、私がお嫁さんで良いの?こんな私と結婚して、後悔しない?」 「するわけが無い。というか、俺みたいな奴を許容して受け入れてくれるのはお前くらいなものだ、お前以外を嫁にすることなんて、それこそ絶対に有り得ない」 「……嬉しい」 「あぁ、俺もだ」 そう言って、二人は口付けを交わした。 今までのどのキスよりもそれは暖かくて、柔らかで──きっと“幸せ”とはこういう心地のことを言うのだろうと思った。 ヴァン・クロイツは罪人である。それも親を殺した悪逆の殺人者である。 彼は今まで闇の中を生きてきた。 冷たい暗闇の底を這いつくばって歩いて……ようやく見付けた懐かしく温かい、でもどこか欠けている未完成な光──それこそがアイギナ・ハーツという少女だった。 二人が歩く道の先に何が待つのかは誰にも分からない。 もしかすれば誰にも予想だにできないような悲劇が二人を裂くかも分からない。 だがそれでも、アイギナ・ハーツが傍にいる限りは恐れずに進んでいけるような気がする。彼女がいれば、自分はどんな絶望にも抗い、立ち向かっていけるのだと── だからこそヴァンはアイギナを……ようやく手にした光を二度と離しはしないように、固く腕に抱き締めた。 晴れた空に鐘がなる。 それは祝福の鐘。 始まりを告げると同時に、ひとつの罪の終わりを告げる鐘の音。 終
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