第三章 鬼哭啾啾の亡霊

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「単刀直入に答えよう。あのデモは、負の気、怪異を起こすためのエネルギー源として使われようとしているのだ」 「カイイ?」 「手紙で説明した筈だが……」  刀真の言葉に、葛島は「あぁ……」とわかったようなわかってないような相槌を打った。刀真はやれやれと思いつつ、隣を見たが、氷雨は説明する気は0のようだった。 「いいか。この世は陰陽の霊気によってバランスを保っている。形あるものが存在する陽の界――今俺達がいる世界だな。そして、陰の界。これは形無き物が存在する世界。物の怪などの異形が住むことを許された世界だ。自然界に満ちる霊気のバランスが大きく崩れると、両方の世界が混ざり、陰の世界にいる物の怪達が現実の世界に現れるようになる」 「デモが起きた程度でそんなわけわからんことが起きるってか?」  やはり、葛島は半信半疑だった。当然だろう。人間の社会では毎日何かしらの諍いが起きて、ヘイトを高め、時には殺しあうことさえある。 「万物には自然的な浄化作用というものがある。負の気は憎悪、怨嗟、怨恨などマイナスな感情から生まれるものだが、その多くは時間が経つにつれて、または人為的な介入によって癒えてゆくものだ。自然的な回復が見込めるものであれば、怪異にまで発展することはまずない」 「じゃあ――」 「二つの世界に亀裂が入る条件は二通りある。ひとつは、自然浄化しきれなかった負の霊気が蓄積されるパターン。負の霊気が蓄積されると陰の世界にいる物の怪の力が増していき、現実の世界に具現化するようになる。だが、これも普通ならば陰陽師によって霊気を浄化されるか、物の怪そのものが討たれるために、脅威となる程のことはない」
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