第三章 鬼哭啾啾の亡霊

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 厳密には陰陽師も全てをカバー出来ているわけではない。彼らの数には限りがあり、指の間から零れ落ちるようにして、怪異が各地で点々と発生するのである。  ただ、それも発生した時点で陰陽師に察知され、滅されるのだが。 「んで、もうひとつは?」 「自然浄化出来ない程の負の霊気が一度に放出されるパターンだな。これはかなり特殊だが――、その事例の多くは、人為的に引き起こされている」  そうは言っても、葛島には上手く想像がつかないだろう。何も知らない一般人に一から説明するのはやはり難しい。 「我々陰陽師は陰陽の霊気のバランスを保つ術を持っている。が、その逆、道を外した陰陽師の手に掛かれば、陰陽の調和を一瞬にして覆すこともできる」 「要するに、私達は大工と同じで、どうすればこの世界という建物が倒れずに建っていられるのかを知っているし、どうすればその建物を崩すことが出来るかも知っているということよ」  氷雨がざっくり説明してくれたものの、葛島は困惑していた。  正直な感想としては。 「で、結局俺はどうすりゃいいんだい?」 「あなたが所属している“うみのせいかつをまもる会”のメンバーに最近、オカルト集団が接近してこなかったか」  現陰陽寮も葛島達そのものを疑っているわけではなかった。なにしろ霊術は稀有な例を除けば、先天的に持って生まれた能力に左右され、その能力も幼い頃から自身の手足のように自然と使えるようになるまで鍛える必要があった。  蒼のような、陰陽少女等は生まれる前、胎児の時点から特殊な鍛錬を施すことさえある。  あくまでも葛島達は霊術者達にダシに使われているに過ぎないだろうというのが、現陰陽寮の見立てで、刀真もそう考えていた。
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