第三章 鬼哭啾啾の亡霊

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「……どうだろうなぁ。個人的に接触してる人は年いった人の中に何人かいたような気はしたけど。うちらは別に、個人の宗教にまで口は出さんし」  まぁ、常識的な関係と言えるだろう。とはいえ、葛島は何か思い当たる節があるらしい。 「そう。活動を始めてから一年。ここの着工が始まった頃かな? 年より連中がやたら神話の事を言い出し始めたのは。神の崇りに触れるぞーってなことを主張の中に入れはじめてな。うちは最初、止めてくれって言ったんだけどな。どうにも強気で。『間違ったことは何一ついうとらん』って聞いてくれなかった。仕方なく、うちはうちで、爺さん婆さんは爺さん婆さんで、分けての主張をするようにし始めたんだが……、まぁ、今ではうちらまとめて変人扱いされてしまっとるわけや。うちらの中にちょっと変な事言うやつがいるだけで、こっちが本当に言いたいことなんて、全部捻じ曲げられてしまう」 「それには同情するわ」  氷雨が、さばさばとしながらも、温かみのある気のある言葉を掛けた。 「恐らく、その年配の方達は、霊能力者――私たちは霊術者と呼んでいるけど、そいつらにいいように乗せられてると思われるわ」 「乗せられて……まぁ、そうかもしれんが、それがここで、怪異ってのが起きるのと何か関係があるんか?」 「大ありよ。さっき、刀真君が言ったでしょう? ある一定以上の集団が放つ収斂された負の気はすぐには自然浄化されない――その感情は物の怪の具現化に繋がるものであり、物の怪にとっての恰好の餌でもあるの」  氷雨の言葉を引き継ぐように、刀真が続ける。 「陽の界へと具現化した物の怪は知らぬ間に人へと憑き、精神へと侵食しやがて破滅へと導く」  葛島はまたしても、注意深く刀真の表情を見た。すぐには鵜呑みにはせず、自身で精査している。流石にリーダー格なだけはあると、刀真は思った。この手の集団のリーダー等、聞いた話をすぐに鵜呑みにして騒ぎたてるような奴しかいないと思っていたが、認識を改める必要がありそうだ。 「けど、物の怪ってのはまず陰の世界にいるんだろ?」 「そうだ」 「だったら、その負の気とやらが物の怪になって、その物の怪が負の気でどんどん腹を肥やしても、こっちの世界に来る前に倒してしまえばいいんじゃないのか? お前らにはそれができるんだろう?」
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