第三章 鬼哭啾啾の亡霊

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††† 「それが前回の怪異の事のあらましよ」 一通りの事を話し終えた蒼は彩弓が持ってきた湯呑を一杯飲みほした。 ――蒼さんの式神の話、初めて聞いた。  彼女と一緒に戦った事は殆ど無かったが、式神を使っているところは一度も見たことが無かった。  それに。 「笹井さんもそこにいたんですね」 「あの時、助けてくれたのが蒼さんだったとはね」  一真の言葉に笹井は感慨深げにそう答えた。蒼は、その時助けたのが笹井だったとは覚えていなかったとのことだった。 「私はあの後、義賢さんに助けられたんです」  笹井はそう言った。その後ろで瑠璃が視線を逸らす。 ――瑠璃の方は助からなかった。 「瑠璃は、瘴気の影響で死んだ――が、その霊魂はこの世界に留まり続けたんだ」  この世に未練がある霊は、あの世に行けない――などと言う話はいくらでも聞いたことがあるが、目の前にいる少女、それも最初は笹井の式神だと紹介された彼女がそうだと言われて、皆言葉を失った。 「この世に未練がある――っていうよりは、死んだことにも気づかなかったって感じ、かな?」  瑠璃はそう言って笑う。場を少しでも和ますつもりで言ったのだろうが、それが力んで見えたのはたぶん、一真だけではないだろう。
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