第三章 鬼哭啾啾の亡霊

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「大丈夫、私は日向を置いていかないよ!」 「え……」  日向は一瞬、あっけにとられたように目を丸くした。それも束の間。 「うわぁあああん、月だいすきぃいいいいいい!!」  主に抱きついて、甲板に押し倒した。月はもがいたが、日向は拘束の手を緩めなかった。 「これが世にいう床ドンってやつか?」 「なんだよ、それ……」  晃の言葉に一真はすかさず突っ込んだ。 ――ふざけてる……ようで、実は本気なんだろうな。  日向自身、自分が先代の式神のように扱われると覚悟していたのだろうか。  いや、或いは自分が先代の式神と同じ事を選択するかもしれないと覚悟したのだろうか。  蒼の式神が主の命令で海神の封印の役目を担ったのか、それとも自身の意志で封じたのか。それを蒼は言わなかった。 『うってつけだと思った。だから彼に、後の事を任せたの』  言葉を額面通りに受け取るならば、蒼が命じたことになるのだが。  全てを知っているであろう刀真は口を閉ざして語ろうとはしない。 ――実際に会って聞くしかないってことかな。  もしも、式神が今も生きていればの話だが。  なんにせよ、もう現場は目の前である。嫌でも真実を目にし、耳にする筈。  刀真と南雲輝海が作戦前の確認を行っていた。 「今のところ、航行に問題はないですか、南雲さん」 「問題はない。これよりりゅうぐうへ天城を横付けし任務開始といったところだ。が、吉備からの定時連絡が二分程遅れているな」 「後一分して来なければ、こちらから――」  と、まさにその時、甲板上に刻まれた五芒星にうっすらと青白い映像が浮かんだ。これは、遠距離にある霊気を映像として投影する霊具であるらしい。いわばホログラムみたいなものだ。
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