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南雲の決断の理由を聞いても、まだ納得がいっていないようだった。
「そんなら、俺と一真と、それに義賢さんだけでいいんじゃないっすか? 陰陽少女には役目があるんだし」
「何があるか分からんからな。ここで戦力を分散させるのは手ではない」
「どうせ、怪異の影響で引き寄せられたとかそんなとこでしょう。こんなとこで道草食ってて、怪異が広がるなんてなったら、洒落にならねぇ」
その「洒落にならない」経験を晃は身をもって体験している。そのことを南雲も知っている。
「天后(てんこう)」と、南雲は自身の式神を呼んだ。
「はい、主」
「手勢を船に送れるか?」
「可能であるよ。船の守りが薄くなるがの」
「こっちには最高峰の陰陽師が乗ってる」
一体何のやり取りだろうと思っていると、天后――天の后の名を宿す式神は、手をそっと口元に寄せ、ふっと息を吹きかけた。
息は霊力となり、無数の白い鳥を形作り、飛び立っていく。
「氷雨、クルーザーを調べてから、客船にいる義賢達と合流。一緒にりゅうぐうへと向かってくれ」
『あら、他人の意見を聞くなんて、珍しいんじゃない?』
「そちらの方が合理的と判断したまでだ。それと、私は他人の意見を聞かないんじゃない。他人が意見を言わないだけだ」
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