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「ローンさえ組めば、なんとか買えるものだよ……と言いたいところだけど、そう簡単なことでもなくて、これは友人から借りたものなんだ。後、ボートは独学」
その言葉に、今日初めて怪異絡み以外のことで恐怖を感じた。それは双子の姉である碧も同様だったみたいで。
「えっと……免許とかっているんじゃないですか?」
「小型船舶操縦士免許。こいつは総トン数二十トン未満、二十四メートル以下だから、二級で乗れる」
「……で、免許は?」
舞香の追撃に、笹井はにこやかに黙っている。
これ絶対に持ってないな、とそこにいる誰もが思った。瑠璃は知らなかったのか、あからさまに狼狽えている。
「ま、仕方ないわ。緊急時だし」と氷雨がさして問題にならないと言わんばかりにさばさばと言った。
「いや、緊急時だからこそ、そこは明確に問いただすべきなんじゃ……」
碧が突っ込みを挟んだが、航海に乗り出して、まもなく目標に辿りつくという時に、引き返すわけにもいかなかった。
「私達じゃ、船はつかえないからね。乗矯術は目立つし、陰の界から侵入するのでは、関係の無い余計な物の怪を相手にしないといけないしね」
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