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「おじいちゃんが孫に優しいけど、子どもには厳しいみたいな?」
「それは違う……違う?」
瑠璃の的が外れてはいるが、妙に説得力のある問いに、舞香は姉に確認した。碧は流石と言うべきか、妹よりも堂々とした口調で説明する。
「要するに、物の怪が全ていなくなるようにするには、人間から人間の荒々しい面、負の気持ち、そうねちょっと意味が違うけど、悪い気持ち――怒り、憎しみ、悲しみ、妬み、全てを失くさなければならない。けど、そんなことは出来ないでしょう?」
「う、うん……そう、かな?」
やはりまだ分かっていないような調子で瑠璃が答える。
「実際に、陰の界の物の怪全てを滅しようとしても、きりがないってこと。人間の感情がある限りはね。そして、仮に物の怪を全て滅してしまうようなことが出来たら、陰の界と陽の界のバランスは崩れてしまうとも言われているわ」
「そっか……」
瑠璃は俯いた。鮮やかな着物の袖がそっと揺れる。
「……仕方ないんだ」
舞香は勿論、碧も言葉に詰まった。
「そうは言ってないわ」
助け船を出したのは氷雨だった。
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