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ドンっと、身体全体に伝わる衝撃で、碧は意識を取り戻した。止まっていた時が急激に動き出すかのように、頭がついていかない。
肉塊が眼前を通り過ぎ、腐った肉の臭いが鼻を突く。
「のうまく さらばたたぎゃていびゃく さらばぼっけいびゃく さらばたたらた せんだまかろしゃだ けんぎゃきぎゃき さらばびぎなん うんたらた かんまん――」
練り上げられた霊気が、裂帛の霊力となって氷雨の手から顕現する。
迸る炎が煌びやかに輝く龍を象り、突っ込んできた肉塊を絡めとった。そのまま、浄化しきるかと思われたが、肉塊は炎から逃れようと、身体を捩り、巨大な口からは悲鳴が漏れた。
「丁に丙を掛け合わせ、陰陽の火を生ず!」
碧の体に抱きついていた舞香が体を捻って、霊符を投擲していた。轟っと床を這うように燃え上がった炎が、異形の肉塊に吹き付けた。
「碧!!」
式神の黒が、叱咤するように呼び掛ける。碧は頭のスイッチを完全に切り替え、目にも止まらぬ早さで手印。
「赤龍!! 五龍頭之咆哮――焔ノ極閃(ほむらのごくせん)!!」
碧から霊力を受けた式神の内の一匹、蛟が真っ赤に燃え盛る龍へと変化し、真っ赤な光が肉塊を貫き、部屋の壁を吹き飛ばし、海の彼方へと突き抜けた。
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