第三章 鬼哭啾啾の亡霊

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 これを引き起こしたのは、芦屋道満の継承者を自称する組織によるものだと、聞かされている。だが、それはいったい、どんな組織なのか。どんな人間達なのか。その実態が一切見えてこない。   「お二人さん、考えるのもいいけど、周りを見なさい」  船を覆う、肉の壁。  床から湧き上がるのは、人の形をした肉の塊。 「ダレカ、タスケ」 「オイシソウ」 「タベサセテ」 「タスケ――」  朽ち果てた身体に、  怪異に侵された精神。  腐乱臭漂う肉塊が話す人の言葉。 「ここにある怪異の形代となっているのは、肉塊か……だけど、大本である怪異を絶たない限り、何度でも蘇るわね」  氷雨の顔は青ざめていたが、思考ははっきりとしている。  娘達はそれどころではなかった。  亡霊の類、悪霊が物の怪になった類は今までも見たことはあった。  だが、これほどまでに生々しく、リアルな現実を突きつけられたのは初めての事だった。  鼻から、口から容赦なく入り込む腐臭。  身体の内側にまで入り込んでくる負の霊気。
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