第三章 鬼哭啾啾の亡霊

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「うっ、お母さん……!!」 「くっ……」  舞香は、母親に抱きつきたかった。抱き着いて、これが夢なら覚めてほしいと願いたかった。  碧もまた、母親に頼りたかったが、妹が泣いている姿を見て踏みとどまる。  そして――。 「五行相生、青より赤へ、赤より黄へ、黄より白へ、白より黒へ!」  青龍の持つ木の霊気が淡い光となって身体から放出され、赤龍へと流れ込む。 赤龍の身体の中で火の気が轟々と煌めいた。 赤龍の持つ火の霊気が淡い光となって身体から放出され、黄龍へと流れ込む。  黄龍の身体の中で土の気が煌々と輝いた。  黄龍の持つ土の霊気が淡い光となって身体から放出され、白龍へと流れ込む。  白龍の身体の中で金の気が光輝を発する。  白龍の持つ水の霊気が淡い光となって身体から放出され、黒龍へと流れ込む。  黒龍の身体の中で水の気が、臨界寸前まで高められる。 「ちょっ、碧!」 「ね、姉ちゃん!?」  二人がぎょっと顔を引き攣らせるのも無視して、碧は竜姫と黒龍に命じる。 「蜃、脱出を援護して! 五頭龍之咆哮――黒ノ水砲、放て」  黒龍の咆哮、それは荒れ狂う大河の流れが、肉壁を貫き、外への突破口を切り開く。 「舞香!」  霊力を乗せて放った一言は、平手打ちのように、舞香の頬を打った。  ほとんど反射的に、舞香は九字を切る。
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