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夏の日差しに、果ての見えない海。
水面は、陽の光を雨のように浴びて銀色に輝く。水平線を淡い虹色に染めていた。
陰の界なのかという錯覚すら覚える。
そんな静けさ。
景色と同化したように、一隻の豪華客船が進む。
その先にあるのは、崩壊したりゅうぐう。滅びた世界を現したかのような場所へ。
何かに引き付けられたかのように、向かっていく。
一真は月達と共に、客船へと向かっていた。
乗り込むのは、一真と晃と義賢の三人。刀真と月の二人は、りゅうぐうへと先行することになる。
天城の主である南雲が用意してくれたのは、小型の船だった。式神の一種で、空を飛んで移動することが可能であるらしい。人数制限は、三人まで。
「本当に三人で大丈夫?」
船に乗り込み、天城から離れ行く一真達に、月がそう呼びかける。
「心配しなくても、彼氏は取らないわよー!」
「あんたは何、よけいな事を言ってんだ!! あー……大丈夫だ、月! やばかったらすぐ逃げるし!」
義賢の冷やかしに汗をかきつつ、月には不安を抱かせないよう、言葉を探る。
「っと……そ、そうだ、か、帰ったら、その、思い出の場所へ行かないか?」
月の顔が一瞬、強張る。言葉の意味を確かめるように、ゆっくりと息を吸う。そして――。
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