第三章 鬼哭啾啾の亡霊

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「一真はいつも、言うタイミングがずるい……」  あ、今のタイミングはやばかったかと、一真は冷や汗を流した。しかし――。 「うん、私も行きたい。だから、怪我しないでよ」  いつも見てきた穏やかな笑顔とは少し違う、悪戯っぽい微笑み。一真の事を信頼した上での再会の約束だった。  一真もにやっと笑いながら頷いて応える。  そして、小舟は飛び立つ。 「帰ったら何々しよう系は、死亡フラグじゃなかったかしら?」 「そんなフラグ知らね。へし折って生き残ってやるよ」  義賢の言葉に、一真はそう答えた。 「他の鬼達も連れてこれれば良かったんだがな……」  会話には特に興味を抱かず、晃(あきら)は、そう呟いた。 「仕方ないじゃない。私達がこの戦いに陰陽師側に立って参加していること自体、異例中の異例なのよ。身内の裏切りもつい昨日あったばかりだし、不確定要素を戦力として加えたくないんじゃないかしら」 「俺たちをそんな安っぽい奴らと一緒にしないで欲しいもんだな」  一真は、陰陽師を何人か知っている。だからなのだろうが、晃と義賢のやり取りに辟易した。自分の事ではないのに、自分の心が抉られたような気持にさせられる。 「ふふ、これ以上はやめましょう。こっちの坊やが窮屈そう」 「おいおい、お前は別に現陰陽寮の陰陽師ってわけじゃないだろ? まぁ、深く関わり過ぎているってのは確かだが」 「お前がまた、陰陽師をぶっ潰すとか言い出さないか冷や冷やなだけだよ……」  一真の言葉に、晃はうーんと考える振りをする。相手の不安を煽りたがる嫌な癖だ。中学時代はこの癖のせいで、散々な目に遭った。 「まぁ、ねぇよ。お前と戦うことになるし」 「そりゃ、ありがとな」
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