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「つまり……、この船は怪異が起きた空間に取り込まれたってことか?」
質問しつつも、それがどういう状況なのか、一真にはぴんとは来なかった。魂呼ばいの怪異の時の神社や、岡見学園の時みたいに、ある一帯が怪異の空間に取り込まれているということなのだろう。
――しかし。
一真は苦い顔で、ふと床を見つめた。
「嫌な気を感じる……」
「ほうっ、お前もようやくその手の気を感じられるようになったか!」
懐剣状態の天がカタカタと揺れて喜びを顕わにした。
「俺も感じる。床下……って言っても俺らがいるのは頂上だからな。下は途方も無く広いぜ」
「ま、探すしかないんじゃなーい? 豪華客船も堪能できそうだし」
「こんな幽霊船、楽しもうにも不気味過ぎて――」
義賢のお気楽な言葉に、苦笑したその時だった。
それは、床ばかり見ていたから気づけたのかもしれない。
棚の間から床に伸びる黒い人影。それは一真の視線に気が付いたかのようにさっと引っ込んでいく。
「あっ!! おい!」
慌てて顔を上げると、どこかへ通じているであろう鉄製の扉が見えた。なんで、今まで気づかなかったのだろう。
「待て!!」
一真の叫び声と共に、重々しく扉は閉ざされた。
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