第三章 鬼哭啾啾の亡霊

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 どちらにせよ、会って話してみなければ分からない。一真は鞄から懐剣と霊符を取り出し左右の手にそれぞれ構える。晃は両の拳を握り軽く関節を鳴らした。ふと彼の口から洩れたのは鬼の霊気だった。いざとなれば鬼化するつもりでいるらしい。 「その力は温存しとけよ、晃。この先、何がいるかわかんねぇからな」 「ふん、そいつはお前の霊符の腕前次第ってとこだな。五行の力、ちゃんと扱えるんだろうな?」  今まで一真は霊符から自分の身体へ一度霊気を送り込み、そして再び霊符へと霊気を流し込むことで霊気を霊力へと変換していた。  五行相生。例えば、木の霊気から火の霊力へと変換することで、火の霊術が初めて使えた。  だが、今はどうだろう。沖博人と再び相見え、真実を告げられた時から、彼は変わった。  沖博人の弟の魂。  そして沙夜の相棒だった男の記憶。  こんなものを見せられて、まだ自分という人格が保てることが不思議だと、自虐的な感想が頭に浮かんだ。  博人の弟だった者の魂は博人自身の手で一真の身体に憑依させられたものだろう。だが、沙夜の相棒だった男の記憶は……、これは単なる仮説だが、もしかしたら自分はかつて陰陽少女の相棒だった男の生まれ変わり或いは遠い親戚なのではないかと考えていた。
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