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「あら、やってるわね」
「いやいやいやいやいや!!」
義賢の言葉に一真と晃は同時にツッコミを入れた。
――何がどうなってんだ。
都会のデパートからフロアを一つ抜き取ってきたかのような空間だった。
或いは、パーティ会場だろうか。開けた空間を、洒落た店舗が等間隔に構えられており、その間を先客が行き来して買い物を楽しんでいる。
幸せに満ち足りた顔で。楽しそうに――地獄を知らぬ顔で、無垢な顔で、通り過ぎていく子ども達。
誰一人として、一真達の事は見えていないようだった。
「幻術……とも違うわね。まるで、怪異が起きる前の状況がそのまま保存されたかのような感じ」
ビデオみたいなものだろうか。
平穏と微笑みがひたすら流れる映像。
何かが決定的に欠けた光景。
意図的に消し去られたかのような。
「で? このまま嫌な感じのする気に向かってくのか?」
「あぁ……うーん、害がないんならこのまま通りぬけてもいいか」
「いいんじゃない?」
三人がぎこちなく、ショッピングモールを過ぎようとしたその時だった。
「だして」
「ここからだして」
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