第三章 鬼哭啾啾の亡霊

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人のシルエット。  だが、人ではない。  身の丈は3メートルはあろうか。横幅は1メートルはゆうに超えている。  ぶくぶくと太った人型の怪物。喉は短く胴体に埋もれていた。顔には目も鼻もないが、巨大な口が何かを喰らっていた。  食べ物ではない。  だが、その怪物にとっては紛れもなく食料であろう。  穢れたこの場の霊気――この場にたまっている邪気を怪物は喰らう。 その怪物の背中には肉で出来たパイプが伸びていた。 そのパイプは床に繋がっている。 化け物の足元には肉で出来た床が水溜りのように広がっていた。 「ウヴォア」 「っつ――」  怪物が唸りを上げる。こちらには気づいていないようだった。  一真は叫び声を上げそうになる自分の口を覆った。
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