第一章 始まりは終わりの地で

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 とにかく、彼女は博人が復活するための霊術と、復活後の霊魂を体に定着させるための霊術の両方において協力させられた。元々大量の人形を操る術に長けていた彼女は、霊魂の操作に関する霊術とも相性が良かった。  霊魂を操作する霊術すなわち泰山府君祭そして、宮中で行われたと言われる一世一代の秘術、天宙地府祭(てんちゅうちふさい)  万物、人の魂の生死を左右し操るとされる泰山府君、その泰山府君を招き入れるのが泰山府君祭である。その更に上位版とも言えるのが天?゙地府祭(てんちゅうちふさい)。泰山府君をはじめとする十二座の神々を呼び、延長延命を願う。  どちらも古くから皇族、将軍など、偉人のために行われた秘術中の秘術だ。それをこともあろうに、敵の総大将である男に使うなど、言語道断。土御門の長男などが聞けば怒りのあまり卒倒してしまうだろう。 ――今頃、現陰陽寮のお偉い方は、顔を真っ赤にして報告受けてんだろうなぁ。  長倉も陰陽師の端くれだが、どちらかといえば血生臭い現場で戦うことが多かったせいか、あまりお上が考えているしきたりだのに対しては無頓着だった。  彼にとっては、蘇った沖博人がどれほどの脅威になるかの方が重要だった。 「少なくとも命を奪う程のものを仕込んだりはせんよ、トンベのやつはの」 「なら、いいんですがね」  得意げに言う少年に長倉は皮肉っぽく返した。少年は、藤原霧乃という名だが今は安倍晴明の霊魂に憑かれている……らしい。
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