第三章 鬼哭啾啾の亡霊

71/83
前へ
/183ページ
次へ
†††  生まれて初めて聞く銃声に、一真を身を強張らせた。銃弾は熱を帯びて、後ろの壁に当たって跳ね返り、からんころんと音を立てて床に落ちる。  長い髪、白い肌に糸目の男。グレーのシングルスーツで決めているが、服装も表情もやつれて見えた。  初弾を放ち薄く煙を吐いている拳銃の銃口を一真達陰陽師に向けている。  ふっと笑うその頬に一筋の血が尾を引いていた。男はその先にちらっと視線を向ける。壁に呪符が突き刺さっていた。 「大した腕だ。式神として欲しい位だよ」     冷笑を浮かべ男は義賢を評した。銃口がまだこちらを向いたままなのを、今更のように理解して一真は身構える。晃は既に鬼の甲冑を具現化し、戦う気満々だ。だが、男は争う気はないようで、自分の銃をちらっと見やって腰のホルスターにしまう。そこで気づいたが、男は銃とは別に刀をベルトに差していた。 ――霊刀だ。 「生憎と私の主は1人しかいないわ。死んじゃったけど」  肩を竦め、義賢は鋭い視線で切り返す。男は義賢の正体を知ってか知らずか、その発言を軽く受け流した。 「そろそろ現陰陽寮が来る頃だとは思っていた。が、これだけの怪異が起きてるというのに奴らが寄越したのは女子供とはな。余程戦力不足であると見える」 「あんたは一体……」 「おまけに、俺に関する情報を知らないと来たか?」  ふんと冷徹を張りつけた顔で男は言い放ち、一真、晃、そして義賢へと視線を移していく。
/183ページ

最初のコメントを投稿しよう!

35人が本棚に入れています
本棚に追加