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「うわっ!?」
反射的に腕を盾にする一真の目の前で、マストは真っ二つに裂けて後ろの海へと落ちていった。
「霊刃……?」
義賢は、自分達を救った霊術の軌跡を辿って振り返る。小舟――天后が作った物とは別の――が、剣士を乗せて去っていくのが見えた。
「銀勇……?」
「なんだか分からないけど助けて貰っちゃったみたいねぇ……」
一真が発した疑問に、義賢がいつも通りのマイペースさで答える。
横でぐったりとしている晃がとりあえず愚痴る。
「もう、当分船には乗らねぇ」
「はは、そいつには同意だ……けど、まだ調べないといけないことが山ほどあるぜ」
上空へとなんとか脱出出来た小舟から、三人は沈み始める客船「ウミガメ」を茫然と眺めていた。
『そちらの首尾は』
霊符を通じて3人の頭に南雲の声が流れこんでくる。
「船に術式と思しき祭壇があったわ。それと、りゅうぐうに来てるのは私達だけじゃないみたい。陰陽少女の母上殿の昔話に出てきた陰陽師がいたわよ」
『銀勇か……』
刀真の声が割り込んでくる。普段、話を遮る事のない彼にしては珍しいことだ。
「刀真さん?」
『いや、すまない。続けてくれ』
一真の問いに、刀真はいつも通りの口調で答えた。
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