第三章 鬼哭啾啾の亡霊

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 呆れながら、一真は心の中での評価を撤回する。晃はやはり晃だった。苦笑しながら、一真は目の前の光景に視線を戻す。  島が見えた。人工的に造られた島――りゅうぐう。  話には聞いていたし、写真も見せられた。だが、こうして改めて見ると、人間によって造られたというのが、想像につかない程の巨大さだ。  そして、これだけの大きさを誇りながら、怪異の闇に沈んだ事……、多くの人がその事実を知らないという現状もどうしてそんなことになるのかが想像できないでいた。 ――でも、あの豪華客船で見た幻覚……、いや、あれは怪異に囚われた事にも気付かないで彷徨っている魂がさせたことなんだろうか。  平和だった日々を、リピート再生されるビデオのように見せられていた感覚。そう、あれは。  記憶を元に現実を模倣したかのような世界。  陰と陽の界が歪に交じり合ってしまった空間。  船の時と同じく、あの島にも、数多の物の怪に堕ちた人間が、そうとは気づかないまま暮らし続けているのだろう。 「俺達が解放しないとな」 「あぁ、そうだなっと、スマホ圏外って出てんな。船にいた時は繋がったんだが」  晃が生返事で返しながら、首を傾げた。「こんな時に何やってんだ」という顔で一真は見返すも、晃はふざけてるつもりではないらしい。 「銀勇って奴が船を破壊したのと、なんか関係があるんじゃねぇかな……」 「ま、そうだろうな。だが、あいつが味方なのか、敵なのか。今の所は味方ってとこで考えといていいだろう。それで?」   と晃は下を指差した。亡者という表現がぴったりとくる。人間の影が彷徨い歩いていた。船にいた亡者達と同じように――。 「迷いは吹っ切れてる。こいつらを突破して――」  気合の高まりと共に、天――破敵之剣が呼応する。百の敵をその力を以て討ち滅ぼしたという刃が振り下ろされる。 「月の元へ!!」 「ほんと、お前、アイツ好きだよ、な!」
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