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「無駄。私が興味あるの、あなた、だけ。おん――じょと、深――がっている――あ、」
ノイズの掛かった声が重圧のように、圧し掛かる。話に聞いていた巫女。
「こいつ、片目……」
「人身御供ってやつだなぁ。さぁ、どうする、一真よお」
相手に同情するでもなく、目の前の現実を事実として突きつける天。一真とて、それにはもう慣れた。だが、それだけではない。
――今の一真には、目の前の巫女が本物か、幻影か位は判断出来る。
「――破敵剣!!」
霊力によって研ぎ澄まされた破敵剣の切っ先は、影へと向けられる。晃が、身体をばねにし即座に下がる。義賢は空高く跳び上がった
「破り、断ち切る! 剣の極意!!」
刃から溢れる霊力が、地上に叩きつけられ亡霊を薙ぎ払う。吹き荒れる余波は、周囲の霊気をかき乱した。直撃を逃れた亡霊の影達も輪郭を維持出来ず、形が崩れていく。
「くくく、よく惑わされなかったな、相棒」
「と、当然、幻影だって分かってたしな!」
天の声に対して、一真は若干自信が無かった事を隠した。船の中にいた時と同じ。自分で自分の力を使っていると確信が持てなかった。
「すごいすごい。ほんと、すごい力だね、お兄ちゃん」
巫女の幻影は消えていなかった。力を自分の物に出来ていない事を見透かされているような気がして、一真は舌打ちする。
「でも、その凄い力、相手が化け物だったから使えた――人にはつかえな――い」
「当たり前だ、俺は陰陽師、物の怪を討つのが俺の役目だ!!」
「お前、一体誰と話して――」と言いかける晃を義賢が遮った。
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