第一章 始まりは終わりの地で

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「チョップ」  友好の握手を月が手刀で切り離した。同時に未来が一真の肩に手を掛けた。この二人息がピッタリすぎである。 「全く、あんたはまたそうやってまた!」 「いや、何がまたなんだよ……」   頬を膨らます未来に突っ込みつつも、少女――瑠璃と言うらしい――に視線を向け続ける。すると、視界を遮るようにして頬を膨らませた赤毛の少女が現れる。 「そうだよー、かぁわいい美少女式神ならここにいるのにぃ」 「だれだ、美少女の式神って……」 「酷っ!!」  ガーンと打ちひしがれる月の式神日向にもやはりツッコミつつも、彼女の言葉は聞き逃さなかった。 「式神、ですか?」 「そう。契約上は私が主ってことになっているよ」  あくまでも、穏やかな態度を崩さない笹井。前に会ったあの時から様々な事があっただろうに、変化を――少なくとも表向きには感じさせない。それは覚悟の裏返しでもある。 「と言っても、僕はフリージャーナリスト。君達陰陽師のように式神を武器には使わない。筆で戦う所存さ」  おちゃらけた態度の中にも、彼の主義がにじみ出ている。それを誇らしげにうんうんと頷いて肯定したのは笹井の雇い主――彼に言わせれば、ボスとのことだが――だった。 「うむうむ、やはり私の見立てに狂いは無かったわぁ。あれくらい覚悟があれば、霊術の使える使えないなんて関係ないのよ、ね?」と、何故だか未来に向かって話題を振る……、いやなにも考えていないようで絶対に意図があるのだろう。 「……義賢さん。正直、私をここに連れてきたのって何か意味があったんですか? 相手の油断につけ込んでの奇襲にしか役に立ってないんですけど」 「あら、利用されたことに怒ってるの?」  義賢が言うと、質問をぶつけた未来はたちまち渋面になった。戦局を変えるための小さな一手。それだけのために使われたという事実を義賢は罪悪感の欠片もなく、認めている。
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