第一章 始まりは終わりの地で

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††† 「捕まえた」 「ふわぁ!?」  船内に入った途端首根っこを掴まれ、首筋に息が当たるように声を掛けられて、月は隠形も忘れて飛び上がった。彼女にしては珍しいかん高い悲鳴だった。肩ごしに白い腕が伸び、続いて小さな顔が飛び出した。  切れ長の瞳に、鷹の尾のようなポニーテールの髪が鼻をくすぐった。 「なにやってんのよ、こんなとこで」  八乙女朝霞。現在中学一年生、陰陽師としての経験は日が浅いが、実力は折り紙つきであり、また生まれ持っての才能も持ち合わせている。そういった意味で月と似通ったタイプの少女だ。  ただ、朝霞(あさか)が月と違うのはその性格だった。朝霞は誰に対しても無遠慮で、いきなり自分の欲求をぶつけるタイプ、月は誰に対しても遠慮がちで自分の欲求はひたむいに隠すタイプ。正反対なと言ってもいいだろうが、どちらも不器用で人づきあいが苦手な点だけが共通していた。 「あんた、なんか都合悪くなると、すぐにどっかに隠れたがる習性があるもんね」 「ど、動物みたいに言わないで」  月は顔を赤くして否定したが、朝霞が指摘したことは図星だ。京都にいた頃は何度か一緒に行動したこともあったが、ここまでよく人柄を見られていたとは意外だ。 「……主に卵を好む珍獣」 「ムカっ」
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