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ボソッと呟いた朝霞の表情がまた挑発的で、腹が立つ。
「嫌味が言いたいだけなら、どっか行って欲しいんだけど」
「ふん、冗談。こっちはそっちの愚痴には付き合うつもりなんかサラサラないからね。どうせ、あの男とかのこで悩んでるんだろうし」
「んぐ」
またしても図星。なぜわかったのかという顔をしていたのだろう。朝霞は大げさで腹の立つため息をついた。
「あんたはあいつの事が好きなんでしょ? でも、自信がないんだ」
「……自信」
「そりゃ、そーよね? あんたとあいつじゃ生きる世界が違いすぎるもの。それだけじゃない。あんたには、物の怪と戦うための加護という名の呪縛がその血に刻み込まれている。死ぬまで戦うなんて生温いものじゃない。次の子に、そのまた次の子にと宿命は受け継がれていく」
朝霞の言葉には配慮というものが一切無かったが、どれも事実だ。しかも朝霞が見ていたのはそこだけではない。
「で、なんかあいつ――一真とは別に一般人みたいな女がいたけど。あんたのライバルはあの女?」
「ライバルだなんて……」
「なるほど、強敵ね」
話を聞かずに確信する朝霞に月は項垂れた。タチが悪いのは、それが事実であることだ。そして朝霞が強敵だと評するわけも月には理解できた。
未来は、月などとは違う。一般的な高校生だ。一緒にいるせいで何か危険な目に遭うわけでもなく、重苦しい宿命を負っているわけでもない。
普通の生活を送りたい者にとってどちらが付き合いたいか等、火を見るより明らかだ。
「けど、そんなんで自信無くしてるようじゃ、やっていけないんじゃなーい?」
より強い煽りをかけてくる朝霞に、月は怒るよりもまず先に虚を突かれて小さく口を開けた。そんな月の反応を置き去りにして朝霞は月の横を通り過ぎる。
「だってそうじゃん。じゃあ、今までのあんたのご先祖様は、みーんな恋愛できなかったわけ? あんたのおかあさんはどうなのよ?」
「それは……」
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