第一章 始まりは終わりの地で

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言葉に詰まる年上の少女の答えを待たず、朝霞は月が入ってきた扉を横に引いて外へと出ようとして、誰かとぶつかった。 「うわ、ごめんね?……あ、月!」  入れ替わるようにして入ってきたのは今まさに話題にしていた“ライバル”である。朝霞はフンっと鼻を鳴らし、何事も無かったかのように白々しくその場を後にした。 「あんな小さな子でも陰陽師やってるんだよね……」 「未来、それ本人には絶対に言わないでね……」  聞こえていたら問答無用で斬りかかってくる事だろう。月は本気で注意したつもりだが、未来はそれを聞いてクスクスと笑った。 「なに? まさか、言ったらあの子ブチギレるの?」 「あ、あの」と月は逸れそうになる話を戻そうとした。 「何か私に話があるの?」 「……話し合いしてる最中で勝手に抜けてその言い草はないんじゃない?」 「ごめん」  つくづく自分のことしか考えてないなと反省しつつ、月は顔を赤らめた。未来の表情は読めない。 怒っているようにも見えないが、かといって好意的にも見えない。 「でも、そうね……話なら一つだけ。昨日のこと。ごめんね」  昨日の事。何のことかはすぐに察しがついた。未来と一真との間で起きた小さな言い争い。そして、未来が月に対して言い捨てた言葉。 『邪魔……、しないでくれる?』  早鐘のように鳴る心臓、思考が止まってしまうような寒気が思い起こされる。どこか緊張しているように見える未来の顔に、月はいつの間にか息を止めて見守る。
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