第一章 始まりは終わりの地で

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「私焦り過ぎてたみたい。だからあんなウザイ言い方になったんだと思う」  早口に言って、ひと呼吸。「でも」と付け加えられて、月の心臓はさらに早く鼓動を打った。 「一番、ズルいのは一真よ。あんだけのことあってもまだ、返事ないもん」  急に月は落ち着いた顔、というより冷めた顔になり、同意した。 「うん」 「はっきりとしないのってすごく腹立つよね」 「うん」  苛立ち。それは未来と異論なしで共有できる感情だった。  いつも一緒にいるのに肝心なことは何も言ってくれない。それは、未来の言うとおり「ズルい」と思ってしまう。勿論、それは裏を返せば「何も言わなくても通じ合える」ということなのかもしれないが。  あの戦いの最中で告げられた言葉。あの言葉に嘘偽りはないと本人は言っている。ならば。 ――未来の前でもちゃんと言って貰おう。そうしないと、なんだか落ち着かない。  “天城――壱”は、その後、数分で栃煌神社へと着いた。話題の少年は少女二人が苛立ちを共有したことをまだ知らない。
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