第一章 始まりは終わりの地で

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 義賢曰く、一つは自己を犠牲にしてでも誰かを助ける心。もう一つは誰かを傷つけてでも、自己を守ろうとする心の二つに。 「虚偽が晴れて、都に戻ってきた時、彼の心は二つの両極端な思いで張り裂けそうになっていたの。それでどっちの魂が思いついたのかは分からないけど、彼は自分の霊魂を和御魂と荒御魂の二つに分ける事にしたの」  魂だけの存在となった役小角、和御魂と荒御魂、二つの魂はそれぞれ別の道を辿ったのだという。和御魂となった役小角は義賢の故郷である大峯山で彼女の息子達を鍛え上げ、荒御魂となった方は義覚と共にどこかへと去った。 「まぁ、それでお互い幸せなら良かったんだけどもねぇ」 「そうは上手くいかなかったと」  日向には義賢や和御魂の方の役小角の気持ちがよくわかった。自分も月に仕える前は、自由気ままな霊鳥に過ぎなかったが、それはある何かから逃れる為の行動でもあったのだ。  時は歩みを止めない。過ちは逃れてもなにかしらの形で、どこか別の場所で未来を形成するのだ。
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