第一章 始まりは終わりの地で

30/71

35人が本棚に入れています
本棚に追加
/183ページ
 刀真は、ちらっと南雲の方へと顔を向けた。南雲はわかっているというように頷いた。 「沖君の話は、ここと現陰陽寮の幹部以外には口外はしない。安心していい」  それに続いて笹井もまた頷き、他には口外しないことを誓った。 「僕の式神にも固く口止めしておく。もしも誰かに喋ったら……そうだな、お仕置きしておくよ」 「そんなぁ!!」  ガガンとショックを受ける瑠璃の姿に一同の空気が和らぐ。そんな中、蒼の視線だけが別の方へ向けられているのに日向は気がついた。月が帰ってきたのかと思ったが違う。彼女の視線の先には遠くから話を聞いている霧乃の姿があった。船の内部と外との間を仕切る扉に背中を預け、じっとこちらに視線を送っている。  日向は未だに、彼の真っ白な束帯姿に目が慣れなかった。霧乃が岡見学園で安倍晴明と名乗っていたこともこの印象をさらに強くしているのだろう。もしかしたら、一真がこれから話そうとしている事と霧乃が抱えている秘密には共通するものがあるのかもしれない。  蒼は再び視線を一真へと戻した。霧乃がここでの事を別の誰かに話すことはないという信頼があるのかもしれない。日向は一瞬迷ったが、蒼にならって一真の話に意識を戻した。  背筋に霧乃の感情のこもらない視線を感じながら――。
/183ページ

最初のコメントを投稿しよう!

35人が本棚に入れています
本棚に追加