第一章 始まりは終わりの地で

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 あれが幻影だったとして、それを見せるメリットは薄いように思える。何より、自身の中に眠る「一真」の魂があの光景に反応したのだ。わからないと答えておいてなんだが、一真はあれは現実の光景だったと思う。  一真の中に眠る「一真」の魂が経験した事。  今ある自分は果たして本当の自分なのか。  今ある自分は単なる器に過ぎないのではないのか。  頭蓋骨の内側を喰い破って別の誰かの魂が這い出てくるのではないか。  卵から雛がかえるように……。 「なるほどな……。ならば聞くが、君の中に眠るそのもう一人の『一真』は、博人の側へとつこうとしているのか?」   一真の今の精神状態を知ってか知らずか、刀真はそんなことを訊ねた。恐らくは理解しているだろうし、案じてもくれているだろう。しかし、その感情を脇に置いて、冷静にこの件を吟味しているのだ。そして、そんな刀真の慎重さが今の一真にとっては何よりもありがたかった。
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