第一章 始まりは終わりの地で

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「叔父……って俺にとってあの人が叔父なのかは今はわからないけど、『一真』は博人の所へと行きたがっていました。それが味方になりたがっていたからかなのかはわかりません。というか、もしも『一真』がそうしたいのなら、初めからそうしているはずだ。もっと前に……」  そう、考えてみれば分からないことが多い。一真は幼い頃から博人と叔父と甥という関係で関わってきた。もしも、生まれた時から『一真』の魂が眠っていたのだとしたら、なぜさっさと仲間に引き入れなかったのか。 「さて、それはどうかなぁ?」  口を挟んだのは日向だった。口調こそいつものように砕けているものの、その表情はどこか妖しく、冷たい。 「自覚はないかもしれないけど、君はずーっと監視を受けていたんだよ? 月と関わりはじめてから、あの神社の中の封印を解いてしまってからね」 ――まだ幼かった頃から、一真は突き動かされるように「強くなること」を追い求めていた。今にして思えば、自分の心の中に眠るもう一つの魂の記憶が無意識に「強くなること」を要求していたのかもしれない。  ともかく、一真は博人にそそのかされて、「強くなる何か」を求めて栃煌神社へと行きそこで月と出会った。 「月と出会った頃のあなたと月は……」ふと、蒼が過去に想いを馳せるように目を閉じた。  そして……。 「とても可愛らしいカップルだったわ」
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