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一瞬、本当に一瞬場の空気がよくわからない沈黙に包まれた。一真は何も言っていないのになぜか全員からの視線による集中砲火を受けて、顔を炎上させた。
「まぁ、冗談はさておいて……」
しれっと言う蒼に若干殺意を覚える。月も大人になったら、このくらいの冗談は言うようになるんだろうかとふと思う。
――てか、あいつ、いつも肝心な話するところでどっか行っちゃうよな。俺のせいなのか?
「少なくとも、ある程度以上の実力を持った陰陽師の注意を引くくらいには、あなたの魂には特異な点があった。現陰陽寮は、在野の陰陽師をあなたから遠ざけるのに随分と苦労したのよ」
「遠ざけるだけじゃなく、監視も、でしょう?」
物陰に隠れて聞いていたのか、霧乃が向こうから歩いてくる。いつもと変わらない斜に構えたような言葉とは裏腹にその口ぶりには熱がこもっているような気がした。
藤原霧乃。一真の友達。現陰陽寮から密命を受けて行動する陰陽師。だが、岡見学園での一件から一真の知らない彼の一面が現れ始めていた。
「あ、今の俺は『藤原霧乃』だから」
「“今”は?」
「あぁ、お前には話してなかったけか? ……いや、俺は話した覚えないけど、晴明のジジイがなんか言ってたか……?」
喋っているうちに、気持ちが昂ぶっていく。それは誰の目にも明らかだった。そして、今霧乃はとんでもないことを口走った。
――晴明のジジィ……って、やっぱりあの時のは安倍晴明だったのか。
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