第一章 始まりは終わりの地で

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†††  他の皆よりも早く、月は未来と一緒に舟を降りた。目の前に降り立ってきたのは巨大な凧(?)  飛び降りるように空中から舞香が抱きついてきて、月は思わずよろけた。その後ろから彩弓が駆け寄ってきて腰に抱きついてきた。未来の姿にも気がついて、そちらにも手を伸ばしてくっつける。 「た、ただいま、みんな」 「月ぃいいいー!! よかったよぉ……」 「月お姉ちゃん、未来お姉ちゃん、おかえり!」  二人の出迎えは嬉しかったが、後からやってくる陰陽師達に見られて、とても恥ずかしい。未来もなんだか場違いなところに呼ばれたような顔でぎこちなく笑っている。  後からやってきた碧と黒龍、竜姫がその様子を見て、妹達を止めようとしてやめた。  恥ずかしいよ……と目で訴えたのだが、皆、にこにこと笑っているだけで止めてくれない。 「おかえりなさい、月」 「た、ただいま、碧」  碧も舞香も茨木童子――朱煉獄――との戦いで、大怪我を負っていた筈だが、少なくとも見た目には、傷らしい傷は見当たらない。治癒の霊符だけではない。恐らくは竜姫の変若水の能力を使ったのだろう。 「大丈夫だった? 三人共……」  やっと手を離してくれた舞香と彩弓そして碧を見比べて訊ねる。舞香がムンっと腕コブを膨らませて元気さをアピール……して、彩弓に肩をトンっと叩かれて「イタタタ」とうめいた。 「み、み、見ての通り、元気だよぉ」 「うん、無理しないでね……」 「ま、皆、死んではいないし、月が落ち込む必要も、ましてや責任を感じる必要とかこれっぽちもないからね」  月の心を見透かしたように、碧がどこか呆れたように言った。月は慌てて暗い表情を消してややぎこちなく笑った。 「それよりも、なんであなた達二人だけで降りてきたの? 他の皆は?」  うっ、と月は思わず唸った。碧も舞香も短くない付き合いなので、その反応だけで何が起きたのかを見抜いていた。そして、月も長い経験から、この二人がこの次にどんな反応をするのか分かっていた。 「「はぁ……」」 「さすがは双子。息もぴったり」と彩弓が場違いなコメント。
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