第一章 始まりは終わりの地で

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「あわ、ひゃわ、やめれ、ごべんなしゃい、じゃから、ほっぺひっぱりゅのやめれ」  ぐいぐいと容赦なく頬を抓られて、月は謝りながら自分の式神を制止した。 「ふん、一真君が悩んでる時にこそ月がいてあげるべきなのに、肝心な時に消えるの止めてくんないかなぁ!」 「う、うん……な、悩んでいるって、もしかして、沖博人と戦ってた時のこと?」 「当たり前じゃん!」  その名がでた瞬間、碧と舞香の顔に驚愕の表情が浮かんだ。しかし、日向は怒り心頭でそれについて説明するどころではないようだ。 「居るべき時に居なかった事についていちいち説明するのメンドーだから、直接頭に聞いたこと送り込むよ?」 「え、あ……」  有無を言わせず、日向は自分の頭を月の頭へとぶつけた。頭突きのダメージは、次の瞬間伝わってきた情報の衝撃で吹っ飛んでしまった。 「え……これ?」 「え、じゃないよ、この子はもぅ――」と、日向は呆然としている月の頭を掌でぺしぺしと何度も叩いた。  主と式神は感覚を共有できる。月は日向と繋がる為の鍛錬を岡見の怪異の後から続けていた。星降ろしの霊術の負担を減らす為だったが、こんな使い方もあるとは思っていなかった。 ――日向の目を通して見た一真の苦痛の表情。 「そんな……」  一真の話した真実、その話の場から立ち去ってしまった自分自身の行動に凄まじい嫌悪と後悔が湧き上がった。
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