第一章 始まりは終わりの地で

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 現陰陽寮は晴明神社を本拠地としている。もちろん、表の世界で堂々とやっているわけではなく、陰の界を利用しているのだが、そこの地下に安倍晴明の本体もとい元の身体も置かれている。霧乃の身体を使わない普段は、そこに彼の魂が宿っているのだという。  話を聞いただけだと、まるで邪神を奉る宗教のようだが、陰陽師などというのは邪教とさして変わらない技術を行使している。  藁人形に五寸釘を打つ儀式、誰かに呪いをかける技術も陰陽師の物だ。  そして、魂を操る技術さえも。  元はどこの物か、誰の物だったかは定かではない物さえも、陰陽師は学び、自分たちの技術へと昇華してきた。飽くなき探究心とでも言えば、聞こえはいいだろう。だが、そのせいで彼らは人間の手には負えないような力をも手に入れるようになってしまった。  知らなければ対策のうちようがないから。なんとも心地の良い言葉だろう。それは正論だからだ。少なくとも一方的な見方をすれば。そして、正論は常に客観性を伴うとは限らない。
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