第一章 始まりは終わりの地で

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 何かを否定したいわけでも、壊したいわけでもない。ただ、そういうものなのだと無気力感に襲われる。基本的に臆病者である霧乃には、自分の身に起こるであろう運命さえも変える勇気がない。  だから、ある意味では“虚無の徒”、沖博人率いる異形集団に感心はしていた。決して尊敬もしなければ、加わりたいとも思わないが。  南雲鏡、春日刀真、春日蒼、吉備真二、吉備氷雨、そして義賢に五人の鬼、そして笹井城阪。この場に直接参加しているのは霧乃も含めて13名。しかし、通信用の霊具を用いて京都にいる重鎮とも繋がっている。  火龍はいつものように、どこぞへと消えていた。あの破天荒な陰陽師は自由にさせておいた方が、 役に立つ……というよりも、そうするより仕方ないことは、現陰陽寮においては重鎮達の共通認識となっている。  長倉大輔が、大まかな事後報告を終えると、話題の中心は沖一真のことに変わっていた。一真にとっては、あの場の仲間内以外には打ち明けたくなかった話なのだろうが、刀真は彼が話した内容のほぼ全てを包み隠さず告げていた。ただ、一真が話した事が全て事実なのかどうかはぼかした。
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