第一章 始まりは終わりの地で

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『岡見の怪異の時――、役小角は沖一真に対して、東華帝君という言葉を使ったそうだ』  青白い幽霊のような姿を揺らして、通信霊具越しに話したのは、鬼一頑徹だった。お香のような見た目の霊具から立ち上る煙が、気難しいこの剣士の顔を正確に形作っていた。  芸術品が動いて、話しかけてきているような錯覚を霧乃は覚える。  京八流剣術の師範、一真の霊剣術の師匠。剣術のみならず、陰陽道を用いた軍事式の霊術の秘伝を受け継いでおり、その“知識”を活かし現陰陽寮の集団戦法を補佐する立場にある。簡単に言えば、軍事顧問、オブザーバーのような立ち位置にいる。  本人は決して乗り気ではないようだが、軍事式の霊術の秘伝の知識は鬼一頑徹の魂に直接受け継がれたものであるために彼を通してでなくては行使できないこと、そして岡見学園での一件以来鬼一も現陰陽寮の助けを借りなくてはならない面が増えたため、渋々引き受けている。  鬼一頑徹自身は鬼一法眼という伝説上の剣術流派、京八流を生み出した剣士の直系の子孫であり、影の噂では鞍馬天狗の末裔だとも言われている。どこにも属していないというプライドが彼の中にはあるのかもしれない。
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