第一章 始まりは終わりの地で

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「つまり、東華帝君云々ってのは、一真と月の関係を表している以上の事はない、ってことか?」  真二が腕組みしながらそれ以上の可能性についてないか疑問を呈したが、誰も答えを出せなかった。霧乃もそれは同じだった。実を言うと、名称にばかり目が行ってしまい、何かもっと単純な含みが持たされた言葉だったのではないだろうかと霧乃は考えていた。   「それについてはとりあえず、置いておこうか」  刀真は雷命に体重を預けるように手を置いて、話を切り替えた。 「沖博人……名前はともかく、出自の方は偽り、いやそもそもこの時代の人間ですらない、か。そして、その弟の魂を、現代へと転生させた。その転生先の身体が何故、一真君であるかはわからないが……」 「あら、あなた。わからなかった?」ふと、蒼が刀真の話の腰を折った。推理ドラマのトリックをあっさりと解いてしまったかのように。 「かつての陰陽少女――沙夜の相棒だった陰陽師。その生まれ変わりが今の一真君なんじゃない」  その場にいた陰陽師全員が一瞬、反応も出来ずに蒼の顔を見たまま固まった。蒼は周りの反応には気にも留めずに話し続ける。 「躯から霊魂が逃げ出さないための古くからの呪い。霊魂にとって名前は目印のようなものだから。過去に死んだ魂が、同じ名を持ち同じ血を持つ者の体に引き寄せられる……そんな可能性があるとは思わない?」   「うむ、続けてくれ。皆さんにも伝わるように」  驚く夫の表情ばかり見ていた蒼は、周りの陰陽師達の反応を見て、「あ」と驚いた。しかし、さすがと言うべきか、蒼は娘と違い、そこで動転したり逃げ出したりとかはしない。
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