第一章 始まりは終わりの地で

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「えぇ……つまりですね。沙夜の相棒であった陰陽師の名も、敵であった者の名も一真だった。相棒だった方の霊魂は現代の『一真』君の真名に引き寄せられて転生した。そして、敵の方の霊魂は博人の手によって人為的に埋め込まれた物だったのではと。『一真』という名で引き寄せ魂を縛り付けた。敵だった方は人間をベースとした物の怪だったということらしいですから、こちらは転生というよりも“憑依”と言ったほうがいいかもしれませんね」 「うへ、ややこしい」と霧乃は思わず漏らした。  魂の転生。これは輪廻だとかいう仏教的な思想にも通じるものがある。要は胡散臭い占いとかで見てもらえる『前世』だとか、某の『生まれ変わり』に近いか。  生まれ変わりだとか言うと、まるで前世の記憶を丸々引き継いでの人生の再スタートなのではないかとも取れるが、実際には、『前世』で生きていた『一真』と同じパーソナリティを有した人物が再び生まれるというだけの話。  クローン人間がオリジナルと同じ記憶を持っているわけではないのと同じ。  一方、人為的に魂を移動させる方法。これは霧乃自身が経験している。 “憑依”  文字通り、他人の身体に憑き、思いのままに操ることだ。神懸りだとかもこれに近いもので、自分とは違うもう一つの魂を受け入れることになるのが特徴といったところか。 『転生に憑依、か。つくづく運のないやつだ』  創二がクックックと笑った。運がないという点だけは頷ける。陰陽少女の最高の相棒と最悪な敵が同名だった。そんな偶然の上に今の一真がいる。
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