第一章 始まりは終わりの地で

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「ただねぇ、博人が埋め込んだっていう弟の霊魂は人間を基としているとはいえ、無理やり憑依させた物の怪のもの。記憶が人間の頭でちゃんと再生できるかは微妙なところよね。沙夜の相棒の方の記憶。つまり、転生した魂に強く焼きついていた記憶が呼び覚まされてしまったといった方がしっくりくるかもしれないわねぇ」  いずれにせよ、一真は自分のものではない過去の記憶を呼び覚まされたことに変わりはない。 「仮に蒼の言うとおりだとして、本人は気がついていないだろうな。話をする間も、自分自身が沙夜の相棒の生まれ変わりであるという自覚があったようには思えない」   「どうだろうな。気づいてたが言えなかったのかもしれない。が、気づいてなかったとしても、いずれ気が付くだろう。大昔の記憶が元々は誰のものだったかを」  刀真と真二がそれぞれ考えを述べ、それ以上の事は誰も言わなかった。各々がそれぞれに推察をしているだろうが、どうせ似たような意見だろうと、霧乃は思った。霧乃にしても、今出た以上の考えは出なかった。それは彼の仕事ではない。
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