第一章 始まりは終わりの地で

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「それで、彼の“監視”はどうします? 引き続き、俺がすればいいですか?」  沖一真の監視。それが元々の霧乃に与えられた役目だった。そのためだけに、京都市を離れ、栃煌の高校に入った。ただ、このところは監視よりも、共闘する機会の方が多かった。そして、そこで霧乃は気がついた。  彼の成長ぶりは元々力のあった者以上であることに。  まだ確証はないが古来の記憶が戻ったことにより、その力はさらに増していることだろう。 ――いや、増したというより、取り戻したって方が正確なんだろうかね。 『監視は続けてもらう。栃煌にいる全員にな』  そう告げたのは、土御門影葛だった。陰陽頭――現陰陽寮のトップ。湖面に石を投げ打ったかのように静かだが、厳格な声が現陰陽寮の陰陽師の行動を決定する。 『彼の身、彼の周辺で起きる異変の全てから目を離すな。特に沖博人が憑依させたもう一つの魂については、覚醒するようなら対処して構わん』  陰陽次官、二つ名「青龍」の賀茂風雅が具体的な指示を付け足した。影葛を「静」とするならば、彼は「動」。現場に出てきて指揮して戦い、味方を鼓舞する方を得意としている。もちろん、それ以外の指揮も鮮やかではあるのだが。  「静」と「動」その二つが陰陽の如く、うまく交じり合うことで現陰陽寮は効率的に機能する。
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